こんばんは。
ただいま年内最後の授業を終えて、ほっと一息ついている小栗です。
今回はボート部とあまり関係のないことを書きます。
私は前回のブログでも書いたように、比較文学比較芸術コースという学科に所属しているのですが、
その中でお気に入りの授業は「テクスト精読法」という授業です。
内容はというと、課題でアメリカ文学作品を各々読んできて、それについて授業でえんえんと議論する、というものです。
課題は一週間に1冊くらい英語の本がでます。英語が特に得意でもない私にとっては重い課題です。が、何しろ一番好きな授業なので、この授業のために他のほぼ全ての授業を犠牲にしていると言っても過言ではありません(絶対この授業の取り方は間違っています)
私はアメリカ文学がとても好きです。
特に、フィツジェラルドやサリンジャー、トルーマン・カポーティなどの時代(1950年代?)の作品が好きです。
何が好きかというと、勉強不足でまだ硬い言葉は使えないのですが、
彼らが描いている、「不器用で繊細な生きづらい若者」(しかしパッションはすごい)、そして「何か偏った人間性」、といったものが好きなんですよね…
授業で得た知見でいうと、アメリカ文学においては「イノセント」というキーワードがそれ↑を表すらしいです。
無垢と経験、という言葉がありますが、アメリカ文学は「無垢」を大事にして、反対にイギリス文学は「経験」を大事にするらしい。
つまりアメリカ文学では成熟した大人の話ではなく、粗削りの若者にスポットライトが当たるということなんでしょう。
今日の年内最後の「テクスト精読法」は、まさにサリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」でした。
読んだことのない人のために、簡単にどんな本か紹介しておくと、
日本では「ライ麦畑でつかまえて」の名で知られる小説、
アメリカ文学の中では「青春小説の金字塔」的な立ち位置で、主人公のホールデン君が大人や社会を毛嫌いしていて、すごく繊細でめんどくさくて、社会からドロップアウトしそうなギリギリを生きている。という話です。ホールデン君の語りがずっと続きます。
最近、村上春樹の新訳が出ました。
はじめて読んだのは中学生の時で、そこから5回くらいは読んだ気がします。
(※サリンジャーだと、「フラニーとズーイ」も好きです。)

ああついにこの本きたわね、と思って読んでいたんですけど、今まで読んだ時には感じなかったことを感じてしまいました。
あれ、自分は大人になりかけているのかもしれない…
主人公のホールデン君のことが、あまり理解できなくなっていました。
理解はできるんですけど、自分はそのフェーズ(簡単に言ってしまうと思春期)を過ぎてしまった。と感じてしまいました…
衝撃でした。悲しいです。すごく悲しいです。
ホールデン君はまさしく不器用で生きづらい若者で、
うわべだけの会話や挨拶が嫌い、自分の利益しか考えられない大人が嫌い、俗っぽいことで盛り上がる自分の周囲の若者が嫌い。
彼らのことをphonyという言葉で貶します。
そして彼にはすごく繊細なところがあって、
例えばそれは、
・知り合いに会って中身のない会話をやり過ごすのが嫌で、家に帰るのにエレベーターじゃなくてわざわざ10階分の階段をのぼる。
・亡くなった弟のお墓詣りの時、雨が降っているからといってお墓詣りを手早く済ませようとする家族や友人の姿が許せない。許せないというか、がっかりしてしまう。
・妹のために長年探していたレコードを高額で買って、それを割って落としてしまっても、なんとか破片を集めて妹に渡す。
といった、小説の中の細々した部分に表れます。(具体例すぎてあまり伝わらない気もしますが、)
彼の気持ちはわかるんです。
すごくわかるんです。
中学生時代これを読んでいた私にはどこか主人公と似たようなところがあって、
感覚が過敏で、許せないことが結構ありました。「妥協」という言葉も大嫌いでした。
生きづらい感じでした。
でも、今思うとその感覚は貴重なものだったのかもしれません。
今の自分だったら「ここまで心を痛めないだろう」とか、「ここまで執着しないだろう」と思うところが多いです。
その代わり、ある程度なあなあにして人と合わせることを学んだりとか、自分を正当化して許しちゃったりとか、「利益」や「効率」を軸にして物事を考えたりとか、、
そういう大人の世界、社会、に足を踏み入れているのかもしれないです。
すごく悲しいです。
何が悲しいのかよくわからないんですけど、そして中学生の時のままだったら今うまく生きられないとは思うけれど、
心の繊細さを失ってるかもしれないと思うと、危機感すら覚えます。
なんだか文章にしたらますます悲しくなってきました。
ある意味では、大人になりたくないな、、
改めて今の気持ちを文章にしてみると、それこそ悩める若者みたいな感じで嫌ですけど、こんなことを悩んでおります。
どうしようもないですね…
解決策とかも何もなくて、いい話でもないのですけど、
今の気持ちを書き留めておこうと思ってブログにしました。
最後に、先日女子部コーチの岡さんが手作りしてくださったケーキを。
ずっしり感があり、本当に美味しかったです…!

それでは、みなさん、良いお年をお迎えください!
終わり.
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